尾島賢治氏 X 瀧野裕行氏FDA(米国食品医薬品局)の認可を受けたシステムが登場しました。まだ1社しかないですが、今後世界的に普及が見込まれます。第5世代によって、アライナーの製作にかかる時間とコストが圧倒的に下がります。先生のように、ある程度の規模でスタッフもたくさんいる施設には最適と思われます。瀧野:今よりもっと患者さんに勧めやすくなりますし、すぐに取りかかることもできますね。尾島:ダイレクトプリンティングですので、低コストでスピーディーです。瀧野:先ほどお話ししたように、この部分だけ矯正して、その後すぐにペリオやインプラントの治療に入りたいというケースがたくさんあります。また包括的な治療をしていくうえで、もし自院で低コストで早くアライナーが準備できれば、アップライトをする前に必要な場所に必要なタイミングでインプラントを埋入して、その待時期間に矯正で起こす方法も、さらに提案しやすくなりますね。患者さんもより受け入れやすくなるかもしれない。どのみち、患者さんは待たないといけないですから。尾島:RAP効果が発揮されるケースが増えるかもしれないですね。瀧野:アライナー矯正には、まだまだ可能性がありそうです。尾島:はい。ペリオやインプラント治療と連携してアライナー矯正を取り入れることで、とくに中高年の方の治療オプションが増えるのではと期待しているところです。――本日はありがとうございました。入るような動きであれば問題ないのですが、そこを拡大するような場合はリスクが高いと考えます。ただ、すごく歯肉退縮をした場合でも、根面被覆をすると再発はほとんどないです。尾島:まったくないのですか。また下がりそうですよね。瀧野:百ケース以上手がけていますが、再治療は一度もないです。「もし術後に再度歯肉退縮したら、私が責任をもって無料でやります」と話していますが、まったくないです。尾島:カッコイイですね!瀧野:それくらい強固に付着します。もちろん、むやみに根面被覆を行う必要はないですし、やらないですむところにやる必要もない。事前のチェックで適切に診断することが重要です。尾島:そうですね。瀧野:ここで冒頭でお話しした注意事項についてうかがいたいのですが、アライナー矯正の場合、結構、非現実的な歯の動きをコンピュータ上でシミュレーションして拡大したりするので、歯肉退縮するケースが増えるのではと危惧しています。ワイヤー矯正の場合よりも増えてしまうのではないかと。最近、専門ではない先生もアライナー矯正を始めているので、トラブルが増えるのではと心配しています。医原性ともいえる患者さんの不利益は絶対に避けなければならないですし、こういうことがないようにしなければと強く感じているところです。尾島:矯正科では、マルチブラケットの時代から歯列や歯槽頂から外したり移動はしないというルールがあって、それを超えて拡大すると必ず歯肉尾島:最後に将来的なお話をしたいと思います。今主流のアライナーは、自分でスキャンをして、データを会社に送って仕上がりを待つしくみですが、完成までひと月前後かかります。これが最新の第5世代とよばれるタイプでは、スキャンをし、自分でシミュレーションをして、そのまま自院でアライナーを即プリントします。模型の工程を飛ばすんですね。2022年に初めて51退縮をします。拡大するくらいなら抜歯をするが基本でした。ただ、私自身は2015年から矯正前に必ずCTを撮影するようになりました。矯正治療というと、セファロ、パノラマ、石膏模型だけでCTは撮らなかったのですが、今はCTで何mm拡大できるということがわかるようになっています。事前にボーンハウジングの中で、ここまでなら拡大できるということがわかれば、シミュレーションもものすごくシンプルになり、患者さんにも「ここまでは大丈夫、ここから先は危ないです」という説明もきちんとできます。瀧野:なるほど、むやみに拡大するのは怖いけど、逆にきちんとシミュレーションできれば、プラスにもなるということですね。尾島:そうです。確かにデジタルでは無制限に動かすことができます。でも、「この中に限る、何mmまで動かせる」という限界値がわかったほうが、シミュレーションとしては、むしろシンプルにつくることができます。これは私のメンターでもある菅原準二先生がおっしゃっていることです。瀧野:限界値をふまえてデジタル上でシミュレーションを行うことで、ワイヤー矯正のセットアップモデルではわからなかったようなトラブルは少なくなるかもしれないということですね。でも、それをやらずに行ったら、逆に増えてしまう可能性もある。尾島:知っていたら、問題が起こることは少ないと思います。瀧野:そのような先生が増えることを願いますね。アライナーの技術的な進歩が歯科治療の発展を後押しする
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