従来の熱可塑性と比較して、歯への適合が良いという報告もある。3Dプリンターでは積層されて製作されるのでアンダーカットの概念がない。設計も先生自身が考えて自由に設計できる。部分的に歯頚部の辺縁を長めにすることでグリップをあげたい場合や、厚みを変えることもできる。実際に、当院で製作する場合には、辺縁はスキャロップ形態ではなく歯頚部から1.5mm長くしてストレートタイプで設計している。スキャロップ形態と比べてもグリップ力を高くすることができる。海外の学会に参加して最近のトレンドはこの4つである1)口腔内スキャナー2)CT2) 3Dプリンター3)CADソフト、アライナーを設計できるソフト4)新素材のアライナー素材これからのアライナー矯正治療において欠かせない5つの設備について、まずは口腔内スキャナーである。すでに導入されている医院が多いと思うが、患者様にとって良いだけでなく、変形しない正確にデータで保管できる点などから今後は必須と言える。現在はCTで歯の移動限界を分析して矯正治療計画を立てることが必須だと考えている。それによって予測実現性も向上し良い治療結果につながるだけでなく、歯根吸収や歯肉退縮などを避けることができるなどリスク回避ができ安全に治療を行うことができる。私は4年前から3Dプリンターの必要性を勉強会やセミナーでお話してきた。これもまた、海外の矯正クリニックがすでに3Dプリンターを使いこなしていたことから予測していたことである。当初はリテーナー製作で使うことが多かったが、現在では顎位の治療で使用するスプリント、TADs用のサージカルガイド、シェイプメモリーアライナーをプリントしたりと稼働 しない時間がない程活用している。次にCADソフトは、口腔内スキャンのデータからアライナーの設計をしてSTLデータに書き出す(エクスポート)ソフトが必要となる。現在我々はスペインのNemoTech社のNemo Cast を使用している。Nemo では歯の移動シミュレーションを作成することもでき、ステップごとのアライナーの設計が簡単かつ精度高く行うことができる。Nemoを使った治療分析や治療計画の立て方については、筆者のプライベートスタディグループ「オンラインサロン」内にて配信も行っている。後ろに表示されているのがNemo の画面。最後にアライナー素材としてより良い材料を使うことである。しかし、結局のところどのような装置や素材を使うとしても最も重要であることは変わらない。正確な分析と治療計画である。これらは、引き続き我々が怠ることなく研鑽を積み、AI や企業に頼ることなく、我々が自分で考え、設計できる力を身につけることが重要である。アライナー矯正治療は今後しばらくは衰退することはなく、むしろさらに進化することが予想される。 今回のシェイプメモリーアライナーによる臨床結果について、別の機会に改めて報告したいと思う。韓国Graphy 社によるシェイプメモリーアライナーのための3Dプリンター用レジンTC85 はヨーロッパのCE、アメリカのFDAを取得している。54PR
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