◎X-クリップの固定位置図4.1.1a~e 初診時口腔内写真。図4.1.1f、g 同パノラマX線写真およびデンタルX線写真。₁歯頚部遠心に内部吸収像が認められる。図1.3.2 レビュー内で評価を行った誤差の計測図(参考文献5より引用・改変)。図1.3.1 三次元的にプランニングしたインプラントの座標と埋入したインプラントの座標のズレ(参考文献4より引用・改変)。1.3.2ダイナミック3Dナビゲーションを使ったインプラント埋入位置の誤差検証X-ガイドを使ったインプラント埋入位置の誤差検証4.1 上顎前歯部の抜歯即時インプラント埋入への応用症例の概要1章 ダイナミック3Dナビゲーションシステムとは1.3.1はじめに4章 症例検討Oral Implant Rehabilitation SeriesOral Implant Rehabilitation Series1.3 ダイナミック3Dナビゲーションシステムを使ったインプラント埋入位置の誤差検証サージカルガイド(静的ガイド)を使ったインプラント埋入位置の誤差検証1.3.31.3.42389aショルダー部分のズレ(mm)Aプラットフォーム側の 全体的なズレB先端の全体的なズレC角度のズレD深度のズレb先端部のズレ(mm)c角度のズレ(°)Oral Implant Rehabilitation Series ₁歯頚部の腫脹と違和感を主訴として来院。歯頚部に瘻孔が見られ、パノラマX線写真、デンタルX線写真により内部吸収様透過像が認められた。なお、瘻孔部と歯周ポケットとの交通は認められなかった。インプラントを希望されたためX-クリップを口腔内に装着したうえでCT撮影を行い、診断、治療計画の立案に移行した。Oral Implant Rehabilitation Seriesプランニングしたインプラントの位置 まずは、サージカルガイドを用いた静的ガイデッドサージェリーで埋入したインプラントの埋入位置の誤差を測定する方法を検証する。このタイプの術式については過去に多くの文献が存在し、さまざまなインプラント埋入位置の誤差を計測する方法が報告されている。たとえば、①プランニング時のSTLデータと、術後のインプラントポジションを取り込んだ口腔内スキャンデータのSTLデータを重ね合わせる1、②サージカルガイドから作った模型と術後にオープントレー印象法で作った模型の口腔内スキャナーによるSTLを比較する2、③術前と術後のCBCT画像を重ね合わせる3、などがある。 近年のレビュー文献4によると、粘膜支持によるサージカルガイドを用いた無歯顎症例へのフラップレスでのアプローチで埋入した1,556本のインプラントのプランニングと比較した埋入位置の誤差の平均は、インプラントショルダー部の直線的なズレ(a):1.23mm、インプラント先端部の直線的なズレ(b):1.46mm、インプラント間の角度のズレ(c):3.42°、となっている(図1.3.1)。また、部分欠損症例へのインプラント埋入にサージカルガイドを用いた場合の669本のインプラント埋入位置の誤差の平均は、プラットフォーム側の全体的なズレ(A):1.03mm、先端の全体的なズレ(B):1.33mm、インプラント間の角度(C):2.68°、深度のズレ(D):0.59mmであった5(図1.3.2)。 次に、ダイナミック3Dナビゲーション(動的ガイド)で埋入したインプラントの埋入位置の誤差を測定する方法を検証する。ダイナミック3Dナビゲーションは、比較的新しい技術を利用した治療法であるということもあり、静的ガイデッドサージェリーに比べると報告されている文献の数はまだ少ない。そのなかでも、インプラントの埋入位置の誤差を測定した論文を紹介する。この文献では、部分欠損症例に対してEvaluNav(精度評価ソフト)とNavident(ダイナミック3Dナビゲーションシステム)を使って、術前の計画と術後のCBCTを重ね合わせている6。結果として136本のインプラントの埋入位置の誤差の平均は、プラットフォームレベル:0.67mm、先端:0.9mm、深度:0.55mm、角度のズレ:2.50°であった。 静的ガイドの誤差の計測方法でもあったように、術前と術後のCBCTを重ね合わせて計測したものもある7。ダイナミック3Dナビゲーションシステムは静的ガイデッドサージェリーシステムのようにインプラント埋入に同等の正確さを持ち合わせているとされている8。 ここで、ダイナミック3Dナビゲーションシステムの初診:2021年7月 患者:27歳、女性主訴 :₁歯頚部の腫脹と違和感インプラント埋入部位 :₁らない1-3。すなわち最初から計画通りの方向にドリリングを進めていくと皮質骨によりドリルがズレてしまうため、ナビゲーションをリアルタイムで確認しながら、ドリリングポジションを合わせていくことがポイントであった。埋入したインプラントの位置プランニングしたインプラントの位置埋入したインプラントの位置1つであるX-ガイドについての文献を確認すると、近年審美領域や無歯顎症例にも利用され、適応症の拡大が進んでいる9-11。そのなかでインプラントの埋入位置の誤差を計測した文献をみてみる。しかし、おもしろいことに2016~17年ごろの数編の文献のみしかこのトピックに合うような論文はない。X-ガイドを含め、動的ナビゲーションシステムによるインプラント埋入の誤差を、再現性や正確性を持ち合わせて計測する方法はまだ一般化していないことがわかる。 まず、2016年にEmeryら12により報告されたX-ガイドに関する初めての文献がある。模型を使った精度の検証を行っているのであるが(図1.3.3)、MeshLabソフトウェアを使って術前のプランニングデータを編集し、術後のCBCTデータに投影できるようにしている。結果としては、角度の誤差は、有歯顎が0.89°、無歯顎が1.26°であり、三次元的な位置の誤差は、有歯顎が0.38mm、無歯顎が0.56mmであった。有歯顎でも無歯顎でも精度は良いと言えるが、特に無歯顎の場合はトラッカーアームを骨内に固定しないといけないので、その固定が実際の臨床では骨質の影響を受ける。この研究では、模型を使っているのでその影響がないと思われるが、実際は固定源の確保や方法などを工夫しないと実用には難しい。模型による結果ではあるが、フリーハンドや他社のダイナミック3Dナビゲーションを使用した結果よりも誤差は小さかったとされている(詳細は16ページ表1.1.2参照)。ダイナミック3Dナビゲーションやサージカルガ 正確な検査・診断を基に、適切なインプラントの埋入ポジションを決定する(3.4参照)。それを臨床的に実現するためには、正確に、かつ精密にそのポジションに埋入する経験や技術、道具が必要である。しかし臨床的感覚として、術後の結果に満足がいった場合でも、実際に予定した埋入部位にどれだけ近く位置付けられているのかはわからない。フリーハンドでインプラントを埋入した場合は、術前のプランニングポジションがデータとして残されていないため、その誤差の検証は不可能である。 一方、ガイデッドサージェリーであれば、サージカルガイドを用いた静的ガイデッドサージェリーでも、ダイナミック3Dナビゲーションと呼ばれる動的ガイデッドサージェリーでも、プランニングポジションが治療計画ソフトウェアにデータとして残っているため、インプラント埋入位置の誤差を検証することは可能なはずである。しかし、誤差を検証する方法の正確性が低かったり、方法自体の再現性がなかったりすると、埋入位置の誤差を信頼性をもって計測、評価することはできない。 そこで、まずはインプラントの埋入位置の誤差を計測する方法を検証する必要がある。その結果、最終的にインプラントの埋入ポジションが検査・診断を基にプランニングされた位置とどれだけ誤差があるのかを測定することができる。22 審美領域は、角化歯肉の幅や厚みも考慮する必要があるため、X-ガイドにより理想的な埋入位置を決定する。 本症例は抜歯即時インプラント埋入のため、ドリリングの起始点やドリル窩拡大手順は前歯部抜歯即時インプラント埋入の術式に準じて行わなければな881.3 ダイナミック3Dナビゲーションシステムを使ったインプラント埋入 位置の誤差検証4.1 上顎前歯部の抜歯即時インプラント埋入への応用森本太一朗庄野太一郎術式のポイント◎A1:X-クリップ方式(有歯顎)選択の理由:X-クリップを固定できる歯が存在したためでした。販売元や製造元のメーカーに詳細を確認しながらまとめていきました。「どれくらい正確に埋入できるのか?」というのが誰しも一番気になるところだと思いますが、誤差の検証を行った文献データも少ない中、著者らにより独自に産み出した誤差の検証方法を使って解析を行うこともできました。私たちもはじめは半信半疑でX-ガイドを使っていましたが、日々の臨床を積み重ね、データを積み重ねていくことで、かなり正確で信頼性を持ち合わせた機器であるということを認識しました。X-ガイド導入直後のインプラント埋入の正確性は、インプラントそのものの埋入経験がかかわっているような結果が出ています。つまり、インプラント埋入初心者にはその補助的役割を果たし、インプラント埋入経験者には正しいインプラントの位置をリアルタイムで再確認しながら行えるような、誰しもメリットがある機器だと考えられます。静的ガイドと違い、手技自体はフリーハンドで行っているのと同じなので、ドリリングや埋入の感覚を忘れることなく臨床を行うことができます。 本書の内容としては、基本的な機器の取り扱い方や準備をするときの注意点から、症例報告や誤差データの解析結果まで含まれています。X-ガイドにも複数の方式があり、それぞれがどのような症例に向いているか、適応症を把握することも、このような新しいシステムを導入するときには基本的なことを抑えて使用していくことが必要ではないでしょうか。 X-ガイドは、ガイドシステムの進歩の途中だと思います。今後は、ガイド支援システムや、自動ロボット手術が可能になる日が来るかもしれません。そういった状況の中で、現在もっとも進んだガイドシステムについてまとめた本書を手に取って、その内容を読んでいただきたいと思います。グローバルスタンダードを目指すJAID 2023過去のダイナミック3Dナビゲーションシステムの正確性のレビューと本書著者らによるX-ガイドを用いたインプラント埋入位置の誤差を検証しています。実際にどれくらい信頼性があるものなのかを確認してください。どのような症例に対してX-ガイドの適応症となるのか、さまざまな症例を通して確認していただきたいと思います。また、注意すべき点など症例に応じて異なるので事前に把握しておくことはトラブルの回避へとつながります。59p22-23p86-87
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