デンタルアドクロニクル 2024
11/180

図1 顔の向きや手の動きも制御可能なシムロイド®。図2 PPEを着用して相互実習を指導する筆者。厚生労働省が行っている「歯科衛生士に対する復職支援・離職防止等推進事業」による支援を受け、整備されてきたもので、現在は都道府県歯科衛生士会や大学などをはじめ全国に設立されつつあります。 たとえば、筆者が所属している東京医科歯科大学「歯科衛生士総合研修センター」も、そのうちの一つです。「免許取得後間もない新人歯科衛生士や復職を目指す、または復職後間もない歯科衛生士の方々を対象として、スキルや知識の学びなおしができる場を提供し、臨床スキルに自信をもっていただくためのサポート役」として発足し、前述のシムロイド®をはじめ、マネキン実習、臨床実習、個別指導、アフターフォローなども担っています(図2)。 これらを活用することで、歯科衛生士はより実践的なスキルを向上させ、最新の医療知識にアップデートすることが可能となります。一時的なものではなく、的確で安心感のあるケアを提供できるよう継続的なサポートを受けられることが今後の口腔健康管理において重要だと考えます。 パンデミックにより、世界は一変しましたが、変わらなかったもの・あらためてその価値が認識されたものがあります。それは、「基本が大事!」ということではないでしょうか。感染対策の基本は手指衛生であったことを再確認したように、口腔健康管理(口腔衛生管理・口腔機能管理)の重要性も再認識されました。口腔は全身の入口であり、食べる喜び・話す喜び、口腔の健康を守り維持する予防の専門家は歯科衛生士です。 予防とは、疾病のリスクをアセスメントし(その人のリスク因子にはどのようなものがあるのか、それぞれのリスクの大きさはどのくらいか)、それに対して介入計画を立てて、実行し、評価して、また計画を立てて……という繰り返しが重要になります。歯科衛生士は、歯科衛生過程(Dental Hygiene Process of Care)の考え方に基づいて、予防の専門家として人びとと向き合っています。 筆者は大学院博士課程に在籍中、「社会構想マネジメントを先導するグローバルリーダー養成プログラム」という、東京大学の9研究科から21専攻が参加するプログラムに所属していました。ガイダンスで言われたのは「T-Shaped person(T型人材)になれ」ということ。T型人材とは、みずからの専門分野に関しては深い知識や技術をもち(これがTの縦棒の部分)、かつ、専門外の分野に関しても広く知見をもち、他分野との連携がとれる人材(これがTの横棒の部分)のことを指すそうです。歯科衛生士も、専門家としての専門性をより高めながら、横のつながりや分野を飛び越えて、多職種連携しながら、人びとの健康に総合的に寄与し、疾病に立ち向かう存在となることが期待されています。 歯科衛生士養成校として、4年制大学数はますます増加しています。また、その枠組みだけでなく、専門職としてよりプロフェッショナリズム・中身もともなってくる必要があるでしょう。それを示す指標の一つが認定歯科衛生士制度であり、また歯科衛生士による学会開催やエビデンスの発信、歯科衛生士会の活動の活発化などが重要になってくるのではないでしょうか。歯科衛生士のみなさん、より多くの人びとの健康に寄与するために、一緒にがんばっていきましょう。9ポストコロナ時代に向けて、これからの口腔健康管理  巻頭特集1参考文献1. 安達奈穂子,品田佳世子.歯科衛生士教育におけるシムロイド®の活用.口腔病会誌.2022;89 (1):18.リスクを把握し、介入し続ける使命は変わらない専門性を高め、他職種とともに健康を支えていくために

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る