――松下歯科医院は予防歯科を中心とした医院だと思っています。病因論など移り変わりが激しい歯周病に対して先生方は今後どう取り組まれていくのでしょうか?松下(純):歯周病治療の目的は明確になってきています。口腔内常在菌を完全に駆逐することはできないので、歯周組織の抵抗力と病原菌の病原性の均衡状態を保つようにしていくのが最終目標だと思っています。 図1を見るとわかるように、年代別によって大分変わってきますよね。20代は緑が多く、赤が少ない。年代が上がるにつれて、赤の比率が増えているのがわかります。個々の患者さんに対して、「あなたは高いリスクなので、こういう治療やこういうアプローチをして、目標はここにもっていきましょう」と伝えるのが、歯科衛生士さんも含めて僕らが目指すゴールなのかなと思います。 ですので、定期検診に来る人全員が3ヵ月に1回というのは、文字どおり定期的な検診になってしまって、それは少し違うのではないかと思うようになりました。先ほどお話ししたように個々の患者さんによってリスクはまったく変わってくるので、「あなたは高いリスクなので、間隔を1ヵ月にしましょう」とか、「あなたはリスクがまだぜんぜん高くないので、半年くらいでもいいでしょう」とか、それぞれの患者さんのリスクを評価してメインテナンスを行っていくというスタイルが、本当の意味での患者さんと向き合ったメインテナンスなのかなと思います。――図1は非常に貴重なデータですね。30代の方は共生関係破綻の面でいうと、免疫力が高いためほとんど歯周病の症状が出ていない患者さんが多いということでしょうか。松下(至):そうだと思います。自分できるようになってどのように治療が変わったのか、詳しく教えてください。松下(純):歯周病治療の内容自体は大きく変わってないと思います。ですが、今まではプラークコントロールが悪いのにまったく歯周病が進行しない人や、セルフケアやメインテナンスをがんばっているのに歯周病が進行してしまう人がいて、「何でだろう?」と思っていました。それが、オルコアを使用するようになって明確になってきました。「ああ、P.g.菌が多いからだ」と。 オルコアは、P.g.菌が多い、少ないと明確な数値を出してくれるところが良くて、たとえば糖尿病の場合は「HbA1cを7以下にしましょう」「ここをゴールにしましょう」というのを、医師側と患者さん側が共通認識のもとゴールを設定して、その目標に向かっていけるかと思います。しかし、今までの歯科の場合は、「とりあえずプラークが多いから減らしましょう」「汚れているからそれを取りましょう」という感じでした。それが数値化されることで、歯科衛生士を含め、術者側と患者さん側が目標を明確に認識できるのはすごくいいなと思います。 数値化するというのは、歯周組織検査など僕らは日常でやっています。たとえば、エックス線写真を見て、歯周ポケットが深い箇所に対して、「こういうアプローチをしましょう」という119オルコア×松下至宏×松下純也など治療全般を勉強させていただきました。パラダイムシフトは、歯周病でも起きているたちの世代は「歯周病菌は中高年になって感染する」と習いました。今思えば、おかしいことだらけなんです。少なくとも自分が経験してきた40年間の臨床のなかでは。今、従来の方法がデジタルの進化にともない劇的に変わってきているので、どうしてもインプラント治療や審美補綴など華やかな治療に目を奪われがちですけど、実は歯周病もずいぶんパラダイムシフトというか、今まで是とされていたものが必ずしも是ではなくて、下手したら非かもしれない、というところに進んできていると思います。 これは若い先生にいつも言うのですが、2000年に初めてP.g.菌がクローズアップされたわけですから、現在、臨床に携わっている歯科医師・歯科衛生士のなかには、P.g.菌を習ってない人もいます。新しいことを取り入れて、それを医院のシステムとして咀嚼して発信していけば、隣に歯医者さんができようが、向かいに歯医者さんができようが、同じビルにいようが関係ない。いつでも生き残っていけるんじゃないかと思います。オルコアで数値を出すことで、リスク目標が明確に(%)――先生方には、歯周病原因菌であるP.g.菌を測定できるオルコアを使っていただいておりますが、細菌検査が66801001618155304020(179)(86)(20)372910034(代)8090(3)(計1038名)(49)図1 松下歯科医院で集計したオルコアによるP.g.菌検出率のデータ。歯周病の有病率が高い30代~60代にかけて検出率も高くなっており、60代以上では検出率が5割を超えている。集計期間:2020年9月~2021年8月(3,000-5,000):かなり多くP.g.菌を検出【1,000個以上/μL】(1,000-2,999):P.g.菌を検出【100個~1,000個/μL】(0-999):不検出【100個未満/μL】※凡例のカッコはオルコア値395550222022303923506070(207)(267)(227)
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