デンタルアドクロニクル 2024
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hioucg YuDr. Akihir――湯口先生は札幌で開業されていますが、札幌の地域性や、先生の医院の特徴を教えていただけますか?湯口:私のクリニック(図1、2)では自由診療でかつ総合歯科診療(専門分野に特化していない)を行っていますが、北海道では保険診療中心の医院が多く、歯は「保険治療で治すもの」という認識をもっている患者さんが多い気がします。最近になり自由診療専門の医院があることも徐々に知られてきて「保険が効かない自由診療」が浸透し始めているのを実感しています。 当院で診療分野を絞らず総合歯科診療を行っているのは、自身の経験に基づいた理由があります。私は大学を卒業して札幌で勤務医になり、当時『the Quintessence』誌の船登彰芳先生・石川知弘先生の4-Dコンセプトの連載記事を読み、雑誌に掲載されているような審美インプラント症例に興味をもち始めました。 インプラント治療を学ぶのであれば体系的に教わりたいと考え、船登院長のいるなぎさ歯科クリニック(石川県金沢市)で勤務医をさせてもらうことになりました。そこで、インプラント治療の最前線を走っていた船登先生に、インプラント治療だけでなく天然歯を残すことの重要性も教わりました。また、船登先生、石川先生らがファウンダーを務めるスタディグループ・5-D Japanにも所属させてもらい、天然歯の保存とインプラント治療の技術の両方を学んでいきました。 そして、これらの学んだ高度な歯科技術を活かして地元の札幌に貢献するためには、インプラントなどの専門分野に特化せずに総合歯科診療が一番適していると考えるようになりました。――自由診療で総合歯科診療をしている医院は少ないと思いますが、そのようにされている理由やメリットなどあればお聞かせください。湯口:自由診療の特徴を「精度の高い治療」と「質の良いマテリアルの選択」だと考えがちですが、もっとも大きなメリットは、一人ひとりの患者さんとじっくり向き合う時間が得られることだと考えています(図3)。具体的にはカウンセリング時間と治療時間の確保です。患者さんの主訴の中には患者さん自身も気付いていない本当の望みが隠れていることが多く、初診時の問診だけでは不十分なこともあります。じっくりと向き合うことで治療に対するゴールが明確になり、結果として治療に対する満足度も上がります。また1日に診療できる人数を制限することで、培ってきた技術を惜しみなく提供湯口晃弘(ゆぐち・あきひろ)2006年、北海道大学歯学部卒業。2006~2010年、札幌市内歯科医院勤務。2010~2015年、石川県金沢市なぎさ歯科クリニック勤務。2015年、ユアーズデンタルクリニック開業。日本歯周病学会、日本臨床歯周病学会、日本口腔インプラント学会、OJ Active member、5-D Japan。する時間を確保できています。 大変なこととしては、一人ですべての診療を行うため、幅広いジャンルを学び続けなければいけないことと、海外研修などで長期間不在の場合はクリニックが休みになってしまうことですね(笑)。――どのような悩みで来院される患者さんが多いですか?湯口:最初からインプラント治療をしてほしいと言って来院される患者さんはあまりいません。それよりも、何の治療が必要かわからないが、自由診療でなんとかしてほしいと来られる方が多いです。 また、コロナ禍に、地域の患者さんのデンタルIQを高める試みとして専門的な歯科治療について詳しく解説するYouTubeを始めました。そのなかでも特に好評だったのが歯肉退縮治療に関する動画(図4)で、80万回再生を超える反響をいただきました。歯肉退縮に悩んでいる方が多数いるということがわかり、その動画を見て根面被覆の治療を希望する患者さんが来られることもあります。――根面被覆やGBRなどの再建手術もされていますが、印象的な症例などあれば教えてください。巻頭特集1-4ポストコロナ時代に向けて、これからの口腔健康管理12札幌の地域性や医院の特徴自由診療のメリット印象的な症例天然歯の保存とインプラント治療の両立を目指して

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