デンタルアドクロニクル 2024
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図1 札幌の象徴であるテレビ塔のすぐ隣の商業施設「ル・トロワ」内に、2015年にクリニックを開業。図5 骨造成前。理想的な歯冠形態を付与したステントを装着した状態。図2 クリニックエントランス。クリニックデザインは大阪のデザイナーさんに依頼。図6 骨造成後。7mm以上の垂直的な骨造成が達成されている。図3 カウンセリング風景。図4 「歯肉退縮の治療法」というYouTube動画。企画・撮影・編集を一人で行っている。――審美性だけでなく、機能性も考えながら治療をされるかと思いますが、審美性/機能性についてどのように考えられていますか?湯口:私の理想とする治療結果とは、患者さんがその歯を使っていることを忘れるぐらい自然な口腔内に仕上げることだと考えています。歯列不正や大湯口:2020年にOJミッドウィンターミーティングで発表して入賞した臼歯部の垂直的GBRの症例(図5~7)です。これは私のインプラント分野におけるアイデンティティともいえるもので、自身の学術面を語るうえでは欠かせません。全顎的な治療が必要な症例でしたが、長年歯根破折を放置したことにより臼歯部の骨欠損が顕著な状態でした。垂直的GBRが成功したことでインプラント補綴による両側性の咬合が確保でき、患者さんにも「また右側でものが噛めるようになった」と大変喜んでいただきました。硬組織だけでなく軟組織も再建したことにより、自身でのブラッシングも容易なため治療終了後3年となる現在も良好な状態を保てています。きな欠損があればそれを自然に近い状態に補正・回復し、適切な咬合関係を確立したうえで審美的な口腔内の状態に近づけることです。機能性なくして審美的な再建はできないと考えます。 一方で、すべての症例で理想的な機能回復が必須とも思っておらず、患者さんの希望や経済状況も含めて見極めながら、その患者さんに本当に必要な治療かどうかを判断しています。その際は歯科医療従事者側のエゴを極力排除した状態で、患者さんにフィットするものを提供できるかということを目標として臨床を行っています。――日常臨床で重視していることや気を付けていることなどを教えてください。湯口:患者さんのニーズに応えるために、自身や当院が存在していることを忘れないようにしたいと思っています。インプラント治療の場合、患者・術者両面から導く理想的なゴールに対しいかに手術回数を少なくして患者さんの負担を減らしながら、他の術式と同等の審美・機能的な結果を出せるかということに挑んでいます。そのために抜歯前からできる処置はないか、抜歯時にどこまで手を加えるべきか、もっと負担の少ない組織再建法はないかなどを日々模索しています。――まとめとして、湯口先生の考える、インプラントを用いた口腔健康管理について、機能面や審美面も含めて教えてください。湯口:インプラント治療はとてもメリットの多い治療法です。しかし、あくまで欠損補綴の中の治療法の1つであり、それですべてが解決するわけではないということも忘れてはいけません。インプラント治療の技術をどれだけ磨いても、インプラント治療自体が抱えるトラブルは未解決なものがあります。健康寿命が延伸している今、インプラント治療に対して過信せずに、天然歯を保存しつつ、その後インプラントに置き換える際はどのタイミングがベストなのかを考え続けることが大切です。そうすることで、長い健康寿命の中でも患者さんがインプラントトラブルに見舞われるリスクをなるべく回避しながら、口腔の健康を維持できるのではないかと考えています。13ポストコロナ時代に向けて、これからの口腔健康管理  巻頭特集1図7 治療終了後3年経過時の口腔内写真。理想的な歯冠形態を付与した補綴装置周囲に角化歯肉が十分にあることがわかる。審美性/機能性について

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