マスク・グローブ着用と眼の防護(フェイスシールド・アイガード・ゴーグル)などで大声、顔が近い時(食事介助・嚥下訓練・喀痰吸引・口腔ケアなど)患者さんがマスクをせず飛沫が発生する可能性がある場面で歯科医療職は、眼・鼻・口を防護することが望ましいや精神科医へ情報の共有を行いながら感染対策を行っています。 また、一般の病院に比べて精神科病院は医師や看護師の数が少ないです。「医療法施行規則第19条」に基づく必要な医師数によると、一般病床の医師の人員配置は患者16名に対し医師1名ですが、精神病症は患者48名に対し医師1名、精神科救急病棟で患者16名に対し医師1名、看護師は精神科救急病棟では患者10名に対し看護師1名ですが、精神療養病棟では患者30名に対し看護師1名、認知症治療病棟では患者20名に対し看護師1名、閉鎖病棟で患者15名に対し看護師1名で、一般病床に比べて医師は1/3、看護職員も少ない数となっています。ただし、先述したとおり精神科入院患者さんの高齢化、身体合併症の増加にともない看護業務は通常より多く必要となります。①食事場面 集団でホール食を摂取する精神科病院では、窒息防止の見守りや食事介助のためこれまでは1つのテーブルに複数の患者さんを集めて食事を提供することが多くあり、感染対策の観点からは密になることや食事中のムセや咳による飛沫飛散が問題となりました。しかし居室で食事を提供すると、希死念慮がある患者さんは椅子を利用し窓を割って墜落するリスクがあることから、基本的に病室内に椅子や机を持ち込むことが困難であったり、薬剤性嚥下障害による窒息時に対応が遅れることが懸念されました。そこで食事提供時間を前半と後半の2つに分け、1つのテーブルを利用する患者さんの数を少なくする時間分離や、食席の間隔を空ける空間分離を行い対応しています。 COVID-19罹患中の患者さんは、咽頭痛や咳の発生で嚥下困難となることが多く、こまめに病棟を周り、速やかに食形態を変更したりトロミを付与するなどの介入を行いました。また、正面から食事介助を行うと、食事中に発生した飛沫に多く曝露してしまうことから、個人防護具にEB-PPE(眼/体の防護とPPE着用)を使用し、横方向からの食事介助を心がけるよう周知しました。そして、換気を行うこと、食事時間を極力短くすることも合わせて行いました。②口腔ケア COVID-19によるウイルス性肺炎に、細菌性肺炎を合併すると状態悪化の可能性が高いため、誤嚥性肺炎予防重要となります。職員の飛沫曝露を防止するために、喀痰吸引など飛沫発生手技と同様に、食事介助と口腔のケア時はマスクとグローブの着用に加えて、眼粘膜の保護のためのゴーグルや2. 厚生労働省.第13回「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」令和2年患者調査(2022年6月9日開催).https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syougai_322988_00011.html(2023年12月11日アクセス).フェイスシールドを着用して食事介助同様に横方向からのケア、あるいは鏡を用いるケアを心がけました。③服薬介助・剤形選択 COVID-19に罹患し咽頭痛があり内服が困難となると、重要な抗精神病薬が内服できなくなり精神症状が増悪し、ますます拒食・拒薬・不穏や興奮などにつながる可能性があります。その場合は、速やかにカプセル剤や大きな錠剤からOD錠やシロップ薬、注射薬や貼付剤への剤形変更を主治医に相談しながら、服薬ゼリーを用いるなどの工夫で介入します。 COVID-19やインフルエンザ流行など、ますます感染対策が注目される昨今ですが、歯科医療職に期待される役割(剤形選択、食形態選択、口腔管理)は数多くあります。 今後も絶え間ない学びを続け、患者さんのより良い療養生活、病院職員の安全で安心なケアに貢献できるよう精進したいと思います。19ポストコロナ時代に向けて、これからの口腔健康管理 巻頭特集1口腔ケア参考文献1. 厚生労働省.新型コロナウイルス感染症患者の療養状況、病床数等に関する調査結果(11月29日0時時点).https://www.mhlw.go.jp/content/001174044.pdf(2023年12月11日アクセス).興奮時の対応図1 歯科医療職が直面する感染リスクの高い場面(福井記念病院院内感染対策委員会・ICD著者作成)。食事介助・嚥下訓練喀痰吸引マスク・グローブ着用と眼の防護を!歯科医療職が直面する感染リスクと感染対策(図1)
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