デンタルアドクロニクル 2024
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38垂直ゴムを併用したアウトソーシングアライナー矯正治療における望ましくないティッピングの防止について講演したYau Yi Kwong氏(中国開業)。インハウスアライナーで行う顎関節を考慮した成人への治療(檀知里氏)、混合歯列期の治療(熊谷友理子氏)、Benefitシステムとのコラボレーション治療(渡邉仁資氏、いずれも東京都勤務)についても講演された。抜歯治療を成功させるためのフレームワークとしての症例選択、ソフトウェアプランニング、治療の計画と実行、コンプライアンス管理について語るNarandr Chevangkul氏(タイ開業)。バリーテクニック』が開始され、この学びの機会を聞き逃すまいとする参加者で場内の空気が引き締まった。尾島氏は抜歯スペースを閉鎖する際に歯の傾斜や過蓋咬合を生じることがないようにするためのポイントについて明確に述べていった。また、前歯部の状態や犬歯歯根の方向によって戦略を変えること、リカバリー治療について熟知しておくことが重要とした。氏はそのほか、インハウスアライナー治療におけるステージング、形状記憶アライナーの戦略、アライナー矯正治療と審美的な補綴治療のコラボレーション治療の2題についても講演を行った。海外(中国、タイ、米国、カナダ、スペイン、ドイツ)からは9名の演者がビデオ講演を行った。演題の多くを占め注目を集めたのは、インハウスアライナーとダイレクトプリンティング、形状記憶機能をもつ新素材についての講演であった。Ki-Bom Kim氏(米国・セントルイス大学)は、アライナー矯正治療の予測実現性が固定式矯正装置の50%としたHaouiliらの論文(2020, AJODO)を挙げ、この治療精度を上げるにはアライナーメーカーの努力を待ってはおられず、歯科医師自身がパソコンモニタに映し出される治療計画についてそのまま実現すると信じることをやめ、自らバイオメカニクスを考慮した治療計画と矯正装置選択を行う必要があると述べた。そして歯冠・歯頚部を覆うアライナーの部位によって変わる矯正力とモーメントをコントロールでは、部分的にアライナーの厚みを変える、あるいはアタッチメントのデザインや位置をカスタマイズし、矯正力とモーメントの大きさを最適化しながら望ましくない傾斜などの副作用を最小限に抑えることは理論的に可能であり、こうしたカスタマイズにこそインハウスアライナーが有用であるとした。また、Ramón Mompell氏(スペイン開業)は骨格性の問題を有する成人患者に対し、MSE(Maxillary Skeltal Expander、上顎骨骨格性拡大装置)と治療計画用ソフトウェアSmile Digital Designを用いた中顔面の骨格的な拡大と後方歯列の圧下によって、矢状方向・横方向・垂直方向への排列を可能としたデジタル矯正治療について、症例を挙げながら説明した。ここで氏は、複雑な不正咬合も確実なソフトウェアと治療計画を選択することで、治療結果の向上をもたらすことができるとした。これは抜歯治療を成功させるフレームワークのひとつに「ソフトウェアプランニング」を挙げたNarandr Chevangkul氏(タイ開業)と共通するところかもしれない。他では聞くことのできないJAAOならではの演者陣

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