53 90年代まで道に迷った時には地図を出して目的地を探すことがあったが、今では当たり前のようにスマホのナビアプリを開き、目的地までナビゲートしている。歯科領域でもダイナミック3Dナビゲーションが浸透してきている。それがX-ガイド(ノーベル・バイオケア・ジャパン)である。X-ガイドは、2台の高性能カメラによって患者の位置を示す“患者トラッカー”およびハンドピースの位置を示す“ハンドピーストラッカー”を追って、リアルタイムにそれぞれのポジション、角度、深さ、患者の三次元的な解剖を確認しながら正確なインプラント埋入窩のドリリングおよび埋入をアシストする画期的なシステムである。 X-ガイドは欧米で2015年に、日本では2020年に販売開始となった。JAIDでは、2022年にダイナミック3Dナビゲーションの書籍を出版した。日本でのダイナミック3Dナビゲーションシステムに対する関心は年々高まっており、今回の第9回日本国際歯科大会のJAIDセッションにもダイナミック3Dナビゲーションシステムを勉強するために多くの方に足を運んでいただいた。 ダイナミック3Dナビゲーションシステムは、インプラント治療だけでなく、エンド、矯正などに適応できるように世界的に薬事法の認可が順次下りており、スマホのナビゲーションアプリのように、日常的に使われる時が来ると思われる。 JAIDでは2020年にノーベル・バイオケア社より発売されたダイナミック3Dナビゲーションシステム、X-ガイドにいち早く注目し、会員の中から筆者の医院を含め、全国9医院で導入した。インプラント手術は、現在でも未経験者にはハードルが高く、また多くの症例写真から、専門医であってもつねに的確な位置に埋入できていないことがわかる。筆者自身もインプラント手術というものは、経験と高い空間認識能力こそが大事であり、「私だからできる」という自信がベースにあったことは否めない。しかし、X-ガイドを導入した今では、術前にソフトウェア上ですべての条件が満たされる埋入位置を何度も確認し、手術当日は迷いなく行えることとなった。ここに導いてくれたJAIDには大いに感謝している。 歯科大会の講演では、このX-ガイドを解剖学的に危険な症例や静的ガイドでは不可能な症例などに応用した事例を供覧し、X-ガイドの優位性を中心に報告した。現在、難度の高い症例や全顎欠損症例に限らず、少数歯欠損症例においてもX-ガイドには優位性があるため、当院では全症例にX-ガイドの使用を義務付けている。将来的にはX-ガイドも含めたダイナミック3Dナビゲーションシステムを使用した手術がスタンダードとなっていくことが予想される。われわれJAIDも、ガイド手術の新たなイノベーションに向けて情報を発信していくことになるだろう。Quint Dental AD Chronicle 2024毛利国安JAID会員東京都勤務:霞が関デンタルオフィス松成淳一JAID副会長東京都開業:新宿西口歯科医院第9回日本国際歯科大会 JAIDセッション Part 1―解剖を理解したX-ガイドからインプラント補綴まで―
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