デンタルアドクロニクル 2024
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InKenohara6Dr. (b)図1b 内科医師による治療の様子。 コロナ禍の最中である2020年から2022年までと、ポストコロナの雰囲気が濃厚になってきた2023年を比較すると、規制が緩和され世間的には日常が戻りつつあります。 しかし、歯科医院ではそうとも言えないのではないでしょうか。 当医院では、個室で、歯科衛生士が患者さんと密にコミュニケーションを取りながらメインテナンス管理やリスク管理を行う“メディカル・トリートメント・モデル(以下、MTM) ”を採用しているため、コロナ禍では、患者さんの診療数を制限しなければいけませんでした。とくに、メインテナンスに来院していた患者さんに影響が出ており、ポストコロナとされる現在でも、コロナ禍以前の来院数には至っていま(a)図1a 口腔内の診療を行う筆者。せん。メインテナンスの価値を理解している患者さんは継続的に来院しているのですが、そうではない患者さんにはかかわりを絶やさず来院してもらうことが重要です。ただ、それはなかなか難しい課題だと感じています。 また、当医院では以前から訪問診療を行っています。ポストコロナとなり、その訪問診療を再開したところ、患者さんの口腔内環境が驚くほど悪化していました。筆者たち歯科医療従事者は普段、施設スタッフによる日常の口腔ケアでは管理しきれない、難易度の高い患者さんの口腔健康管理を行っているのですが、コロナ禍でこれが一斉にストップしてしまったことが原因と考えられます。そのため、抜歯せざるをえない患者さんが多くいたり、なかには顎骨壊死を発症している患者さんもいました。2005年、東京医科歯科大学歯学部卒業。2009年、同大学院修了。2010年、日本大学歯学部摂食機能療法学講座非常勤医員。2010年より2011年にかけてアルバータ大学リハビリテーション学部Visiting Professorとして留学。2015年、脳神経センター大田記念病院に歯科部門を設立、非常勤歯科医師として勤務。2020年、猪原歯科・リハビリテーション科理事長に就任。2021年、グロービス経営大学院経営研究科修了(MBA)。2023年10月、医院名を猪原[食べる]総合歯科医療クリニックへ変更。東京医科歯科大学、岡山大学、大阪歯科大学にて非常勤講師を務める。猪原 健(いのはら・けん)広島県・猪原[食べる]総合歯科医療クリニック理事長 これらの状況に直面し、定期メインテナンスの重要性を再認識しました。 当医院が訪問診療を行っている背景には、筆者が摂食嚥下リハビリテーションに取り組んでいたということがあります。医院の名称も以前は“猪原歯科・リハビリテーション科”でした。そういった経緯もあり、当医院にはご高齢の患者さんが多く来院します。 ご高齢の方の診療をとおして実感したことは、MTMの視点で口腔の健康は維持できても、全身の健康となるとその限りではないということです。そのため、当院では、MTMに加え、歯科衛生過程も取り入れた広い視点で、包括的なケアを行っています。たとえば、患者さん本人や同居する介助者の生活まで細かく診るように歯科衛生士巻頭特集1-1ポストコロナ時代に向けて、これからの口腔健康管理ポストコロナの診療状況口腔から全身の健康管理へポストコロナ時代における口腔健康管理と「おいしく食べる」こと

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